山本裕子 作品画像

山本裕子さんに聞く - なぜ、ヘビを描くの?

Q:佐々木 豊(洋画家)A:山本裕子

佐々木 ヘビはお好き?

山本 今は大好きです。
佐々木先生は「ヘビが嫌いだから描く。」とお聞き致しましたが、
私はヘビを好きで描かずにはいられないです。
手のひらサイズのヘビは、特にかわいいですよ~

佐々木 ではミジンコは?

山本 ミジンコももちろん大好きです。
小さくても元気に動いていて、ミジンコを含むプランクトンすべてが愛おしいです。
近所の田んぼで水を汲んできて顕微鏡で覗くのが趣味です。
今日は何に出会えるかな?どんなドラマが見られるかな?とワクワクします。
これからもミジンコ等の水生生物が問題なく生息できる水環境であって欲しいものです。

佐々木 前回の個展(2011年)では、ミジンコが威張っていました。
今回はなぜヘビばかりなの?

山本 2001年に群馬のジャパンスネークセンターに伺いました。
その時に見た大きなアフリカニシキヘビのダーナちゃんが少し頭をもたげた美しい姿に
感動しヘビを描きたいと強く思いました。でもどう表現していいのか分からなくて。
キャンバスにヘビを描くと細長いのでどうしても余白が多くなるし、
その余白を埋めるためにビルや風景を描いてはみたものの、
それではこの子の良さが伝わらない。ヘビをそのまま描いても図鑑になるだけ。
ずっと悩んで10年間温めていた題材でした。
そして2011年女子美のモチーフ室で蝶の標本を目にした時、これだ!と思いました。
蝶はダーナちゃんの魅力を引き出せるし余白(空間)も埋めてくれると。
それから堰を切ったようにアイデアが出てきて、今回ヘビばかりの個展に
なってしまったということです。

佐々木 ヘビ愛好家(マニア)の世界があるの?

山本 詳しくないのですが、あると思います。
ヘビをペットとして飼われている方も多いそうです。
先日、大規模な爬虫類フェアに参加しましたが混み合っていました。

佐々木 ヘビを手で触れる?

山本 触れます。
というか無毒ヘビであればあえて触って、重みや鱗の質感、形状を確認します。
ヘビは種類によって鱗の列数が決まっているそうなので実際に数えてみたりすることもあります。

佐々木 りんごと違って、絵の中のヘビでもぎょっとするけど。

山本 確かに現実でも絵でも一瞬ぎょっとしますね。
長瀞で道端を歩いていてアオダイショウが目の前に突然現れた時はぎょっとして驚きました。 チャンスと思い、すぐに取材しましたけど。笑

佐々木 ナマのヘビを見て描くの? それとも写真? 想像で?

山本 そのどちらもあります。
私の描くヘビはすべてナマのヘビを自分で取材しています。
許可を得て、その場で触らせてもらったりスケッチしたり写真撮らせていただいたりしています。
それを元にして、そのヘビの色や柄、姿の美しさ、かわいらしさ等を最大限に引き出せるような設定を想像して描きます。

佐々木 ヘビを描く時、どこに苦労するの?

山本 それは何と言ってもヘビのポーズ決定が一番の苦労です。
人物と違って、こういうポーズして欲しいとヘビに頼む訳にもいかないですから。
取材を元にして、このヘビはこのような時このような動きをするだろうと想像して描きます。
無理な動きをさせて描くとヘビに怒られそうな気がします。
そして、この子をどうしたら美しく見せることができるかを常に心がけて考えて制作しています。

佐々木 箱とかピアノとの組み合わせがおもしろいけど、、、。

山本 ありがとうございます。
キャンバス上では、ヘビちゃんを自由に、どこにでも出現させることができます。

佐々木 理系女子のはしりですけど、研究していた頃の経歴と日常を。

山本 薬学部時代は薬化学教室でビタミンD3代謝の研究をしていました。
卒業後は、東京大学病院で1年間勉強した後、大学病院に就職し7年間くらい在籍し、
エマルジョン化制癌剤に関する研究をしました。
当時は曜日や時間がわからなくなるくらいに研究室に籠っていました。
結果を予測して研究するのですが、10回実験をしても9回はダメで1回でも上手くいけば上出来みたいな。
研究用マウスちゃんがお友達でした。
当直、研究、学会発表、論文作成、講演など。
時間がなくてデートは二か月に1度くらい。かなり地味な日常でしたね。
今は研究室ではなくアトリエに籠っていますので同じようなものですけど。

佐々木 講談社フェーマススクールズで学んだこと、女子美術大学で学んだことを。

山本 フェーマスでは、絵画制作の基礎を一通り全部学びました。
フェーマスのテキストは、写真や図解を使って説明してあり本当にわかりやすいです。
今でも構図についてのページは繰り返し読み返します。
女子美でもたくさんのことを学んだのですが、特に観察描写の実習は勉強になりました。
また、図と地との関係、モノとモノとの境目の関係、密度、完成度については特に意識するようになりました。

佐々木 家事は、ちゃんとしているの?

山本 家事は、やっつけ仕事です。
とにかく生活全体が絵を描くこと中心に回っていて、その合間に気分転換にお料理やお洗濯といった感じの毎日です。
見るに見かねて家族が手伝ってくれることも。感謝です。

佐々木 近い将来の夢を。

山本 おかげさまで、実は今、ヘビの個展という夢が叶って、とても喜んでいるところです。
今まで通り、好きなモノを好きに描いていければと願うばかりです。
そして、一人でも私の絵のファンが増えればうれしいかしら。

(2014年10月 山本裕子展~Sweet Snakes~ 図録より抜粋)